事例紹介
CASE STUDY

日本原燃株式会社 × ユニリーバ・ジャパンホールディングス株式会社 様の導入事例

固定観念にとらわれないスタンスが身に付いた (職種:人事、留学頻度:週5日、留学時:中途入社5年目)

日本原燃株式会社 × ユニリーバ・ジャパンホールディングス株式会社 
  • 目的

    変革を推進するために必要な要素を学んでもらう

  • 背景

    風土改革および人事業務における他社のやり方を知りたい

  • 効果

    「何のためにやるか」という本質を意識するようになった

他社留学を終えて元の職場に戻った「卒業生」と「送り出した人」にインタビュー。「留学前」「留学中」「留学後」のそれぞれの想い、そして「留学後に何が変わったか」「留学先で学んだことがどう活かされているか」について、体験談を語っていただきます。

 

今回お話を伺ったのは、青森県上北郡六ヶ所村に本社を置く日本原燃株式会社。再処理事業など、原子燃料サイクルにかかわる5つの事業を担う会社です。人事・働き方改革担当の中野渡慶介さんが、業種もカルチャーも大きく異なる外資系消費財メーカーへの留学を経験しました。

所属

日本原燃株式会社

留学先

ユニリーバ・ジャパンホールディングス株式会社

他社留学期間

週5回/6カ月(2019年3月~8月)

留学した人

中野渡慶介さん(留学時:中途入社5年目)

送り出した人

働き方改革本部 人事部長 伊谷俊哉さん
働き方改革本部 改革推進グループリーダー(課長)金原裕己さん

目的

変革を推進するために必要な要素を学んでもらう

【他社留学 Before

──他社留学の導入を決めた背景をお聞かせください。

伊谷さん(以下、伊谷) 当社社員のほとんどが青森県の六ヶ所村内で勤務しており、東京などの大都市圏と比べれば、やはり、外部と交流する機会が少ないという事実があります。また、原子力業界特有のルールの厳しさから、考え方が保守的になりがちです。もっと積極性を持てるよう、以前から意識改革を図りたいと考えていました。

金原さん(以下、金原) 私の部署では働き方改革を推進していますが、実際多くの社員が働いている工場等の現場では、安全確保対策など非常に重要なミッションがありやるべきことが多く、いろんなことに挑戦してみよう、変えてみようという改善・改革まで意識が回りにくい状況だと思っています。そこで「着火マン」となるべきリーダーの育成が急務だったのです。他社からの刺激を受けることで、現状への危機感や改革へのモチベーションを高め、「やってみよう」という意欲を沸かせる機会になれば、と導入を決めました。

ご上司 左)人事部長 伊谷俊哉さん 右)改革推進グループリーダー(課長)金原裕己さん

──他社留学で何を学んでほしいと思いましたか?

伊谷 職場における課題のつかみ方、解決方法の探り方について、より効果的な手法を学んでほしいと思いました。「以前はこうだったから」という前例にとらわれず、「あるべき姿」を見据えて取り組んでいく姿勢を身に付けてほしい、と。

金原 「いかにして変革を進めるか」が課題でしたので、アイディアに満ち溢れた活力ある職場づくりのノウハウ・進め方、変革リーダーとしての「心得」を学んでくれることを期待しました。

背景

風土改革および人事業務における他社のやり方を知りたい

──他社留学する人を、どのように選びましたか?

伊谷 「将来、幹部候補になり得る人材」です。他社留学・第1号として送り出した中野渡君は、与えられた仕事をこなすだけでなく、自ら組織課題を見つけて解決していけるタイプ。初対面の人でも、相手のパーソナリティをつかんだ接し方ができたり、自身の取り組みに人を巻き込んでいったりするベースの能力がある点で、適任でした。

金原 中野渡君は教育・人材業界で経験を積んだ後、当社に転職し、さらに当社では職場風土改革を担当してきたので、いろいろな視点で比較・分析ができるだろうと考えました。
「留学後、私たちの先生になってくだされ」と。留学修了後は、我々が彼から学ぶことになるので、「先頭に立って引っ張っていく」という気概を持ちながら経験してきてほしい、と送り出しました。

──中野渡さんは、他社留学生として指名を受け、どう思われましたか?

中野渡さん(以下、中野渡) 第一に「うれしかった」です。もともと新しいことにチャレンジすることが好きということもあります。ただ、縁もゆかりもない外資系企業でうまくやっていけるんだろうか……というのは、期待もあり不安でもありました。


中野渡慶介さん(留学時:中途入社5年目)

【他社留学中】

エッセンスからは、エネルギー関連のベンチャー企業を含めた数社の留学先候補を提示。「全く異なる文化を経験することで、短期間で大きく成長できるのでは」という期待から、大手消費財メーカーであるユニリーバを選ばれました。

中野渡さんは人事部門に所属。留学期間中、3つのプロジェクトを成し遂げました。その成果は、ユニリーバ取締役・人事総務本部長の島田由香氏より「来ていただいて本当に良かった」との評価を得ています。

 

──外資系消費財メーカーという、カルチャーが大きく異なる組織に飛び込まれたわけですが、どのようになじんでいったのですか?

中野渡 最初に任されたのは、人事上の手続きを行うイントラネットの整備です。経験もITスキルもなかったのですが、英語ができるメンバーに協力してもらい、グローバルのIT統括部門のインド人など、海外の担当者とメールやSkypeでやりとりして進めました。
最初の1ヵ月間は、あまりに違う環境に戸惑うことが多く、不安になることもありました。社内用語もわからないし、コミュニケーションもうまくいかない。「やっていけるのかな」と。

けれど、できないことを考えても仕方ないので、わからないことはすぐ聞く、すぐ頼ると決めました。「今できるのはここまでです。知恵を貸してください」と明確に伝えるようにしたら、「じゃあ、こうしよう」と、徐々にメンバーを巻き込んでいけました。2~3ヵ月もすると、「イントラのことならワタリー(中野渡)に聞け」と言われるまでになれたのは、自分でも驚きです。「徹底的に取り組む」ことで少しずつ信頼を得られたのかもしれません。

コミュニケーションに自信が付いてきたら、業務上の気付きなどを社内SNS上で積極的に共有するようにもしました。例えば、「このデータを使いたいときは、ここから入手できる」「このツール、皆さんA機能を使っているけど、実はB機能のほうが便利」といったことです。些細なことも共有するようにしたら「ありがとう」「知らなかった。助かった」と感謝されて、関係ができていきました。

──最初の1ヵ月はつらかったとのことですが、乗り越える原動力となったのは何でしょうか?

中野渡 「後輩たちに道を創りたい」という想いがありました。この他社留学経験を価値あるものにすることで、後輩たちにも新しい世界を経験するチャンスをつないでいきたいと考えていました。また、ユニリーバの職場の中で、相談できる仲間ができたことも大きかったと思います。どんな環境でも、挨拶やコミュニケーションをどれだけ大切にできるかによって、自分自身の働きやすさも変わってきます。すべて自分の振る舞い次第なのだと学ぶことができました。

──イントラネット整備の後、2つのプロジェクトも手がけられたのですね。

中野渡 2つ目がユニリーバ単独で開催した採用イベントの企画・運営。全部門を巻き込んだイベントです。3つ目が、「地域 de WAA」の導入。ユニリーバ・ジャパンは、2016年に社員が働く場所・時間を自由に選べる新しい働き方「WAA」(Work from Anywhere and Anytime)を導入しましたが、「地域 de WAA」は、ユニリーバが全国6つの自治体と連携し、その地域のコワーキングスペースをユニリーバ社員が無料で利用できる仕組みです。ちょうど留学時期が、「地域 de WAA」を導入する時期と重なったこともあり、このプロジェクトを任せていただきました。役員へのプレゼンまで任されたのは驚きましたが(笑)、いい経験になりました。

──他社留学中、元の職場からはどんなフォローをされましたか?

中野渡 上司やメンバーが東京出張の折にユニリーバまで来てくれました。実は他社留学が決まった際、当時の担当業務から離脱することに対し、同僚や後輩に申し訳ない気持ちもあったのですが、進捗状況などが聞けて安心できました。
上司は、ユニリーバでの上長である島田さんに会いに来てくれたこともありました。島田さんが「すごくいい方だね」と言ってくれたのがうれしかったです。

伊谷 短期間とはいえ、留学中は日本原燃で何が起こっているか気になるもの。元職場の若手メンバーがラインを使ってタイムリーに情報を発信してくれました。こうしたフォローによって外にいても「自分は日本原燃の一員なんだ」という帰属意識を持ち続けてくれたと思います。

金原 留学中も伝えていたのは、「ノビノビと、好き勝手に動け」「今までの自分がいいと思ってやってきたこと自信を持って進めてほしい」ということです。

中野渡 実際、日本原燃で身に付けたやり方が活きる場面もありました。例えば、「根回し」というと、旧態依然とした役人仕事のようなイメージも持たれがちですが、「一手二手先を見越して準備しておく」「礼を尽くす」ことはやはり大切です。事前に一言伝えておくだけでスムーズに事が運ぶなど、外資系企業においても強みとして活かせたことの一つと感じます。

効果

「何のためにやるか」という本質を意識するようになった

【他社留学 After
留学期間終了後、中野渡さんは東京支社の人事部(採用担当)に配属となりました。ユニリーバとは今後も交流を続け、人事・採用に関するアイデアやトレンドなど情報交換していくとのことです。「地域 de WAA」にも引き続き関わっていきたいそうです。

──日本原燃に戻った後、他社留学経験はどう活かされていますか?

中野渡 固定観念にとらわれない考え方ができるようになったと思います。自分はもともと改善志向が強いほうだと思っていましたが、それでも「べき論」や「忖度感情」が強かったことに気付きました。ユニリーバにはいろいろな考え方の人がいたので、日々「それもありなんだ」「そういうこともできるんだ」という発見がありました。だから、日本原燃に戻っても、「今までこうしていたから」ではなく「本当にそれが最善か?」「本当に改善できないか?」と、自分の中で問いを立てられるようになりました。

また、留学を通じてユニリーバに限らず、人事業界の方々とも交流ができたので、そういったご縁も大切にしていきたいです。

──日本原燃という会社の魅力を再発見した、ということはありますか?

中野渡 「アットホーム感」「仲間意識」「一体感」です。戻ってすぐ感じたのは、「あったかいな」ということです。しばらく離れて戻ってきても、温かく迎えてくれる仲間がいて、家族のような感覚です。それは皆が同じ目的に向かって、厳しい環境の中でも、心一つに日々仕事に取り組んでいるからだろうと思います。

──他社留学の前と後で、ご自身が「変わった」と思うことはありますか?

中野渡 「自分がどう生きていきたいか」を考えるようになりました。
ユニリーバに行って最初のウェルカムランチで、目の前の席にいらっしゃった島田さんから一言目に聞かれたんです。「あなたのパーパスは何?」と。「人生の目的は何?何をしているときにワクワクするの?」と。その場で何も答えられず、戸惑いました(笑)。

人生の目的は今も考え続けていますが、仕事一つ一つに対する目的意識は確実に高まりました。そして、「自分で決める」ということの大切さに気付きました。日本原燃では、上司に判断を仰いだり、根回しをしたりすることが多かったけれど、ユニリーバでは常に「あなたはどうしたいの?」ということを問われました。この経験を通して、「何のための仕事か」とか「何のために今ここにいるのか」を常に考える習慣が身に付いたと思っています。

目的を認識して、自分で選ぶ、自分で決める――それがいかにパワフルなことかを学びました。これからも実践していきたいと思います

 

会社名

日本原燃株式会社

業種

原子燃料サイクル事業

URL

http://www.jnfl.co.jp/