事例紹介
CASE STUDY

経済産業省 × 株式会社メルペイ 様の導入事例

チャレンジにブレーキをかけていた以前の自分とは
大きく変わった

経済産業省 × 株式会社メルペイ 
  • 目的

    ベンチャー企業の現場を知り、スピード感やチャレンジ精神を身に付ける

  • 背景

    環境変化が激しい為、経済産業省職員が変化し続ける必要がある

  • 効果

    本人の行動変容だけでなく、人材や組織のマネジメントに関する知見も持ち帰れた

他社留学を終えて元の職場に戻った「卒業生」と「送り出した人」にインタビュー。「留学前」「留学中」「留学後」のそれぞれの想い、そして「留学後に何が変わったか」「留学先で学んだことがどう活かされているか」について、体験談を語っていただきます。

 

今回お話を伺ったのは、経済産業省からメルカリ・メルペイに留学した八木春香さんと、他社留学に職員を送り出している人材育成担当者・宮崎由佳さん。

八木さんは、2011年に経産省に入省。ベンチャー企業振興、産学連携推進、ダイバーシティ・女性活躍推進などの政策に関わった後、他社留学へ。留学後は秘書課に所属し、採用および組織改革を担当しています。

送り出した宮崎さんは、「当初の想定を超える発見があった」、留学した八木さんは「チャレンジにブレーキをかけていた以前の自分とは大きく変わった」といいます。

所属

経済産業省

留学先

株式会社メルカリ、株式会社メルペイ

他社留学期間

フルタイム/8ヵ月間(2018年8月~2019年3月)

留学した人

八木春香さん(留学時:入省8年目)

送り出した人

宮崎由佳さん(秘書課・人材育成担当)

目的

ベンチャー企業の現場を知り、スピード感やチャレンジ精神を身に付ける

【他社留学 Before

──他社留学の導入を決めた背景をお聞かせください。

宮崎さん(以下、宮崎)
今、世の中はすごいスピードで変化しています。そんな中で、経産省も成果を出し続けていくためには、職員自身も組織も変わらなければならない、という問題意識がありました。

まず、「職員が変わる」という観点では、企業活動の現場で何が起こっていて、どんな人たちがどんなふうに世の中を変えようとしているのかを肌で感じる。そして、政府がどう関わったり支援したりしていけるのかを考えられる力、考えたことを実現していく力を身に付ける必要があるということ。一方、「組織が変わる」という観点では、職員のアイデアの実現を支援する風土をさらに整えていく必要があるということ。こうした点で、ベンチャー企業には新しいものを生み出すことを目指し、スピード感を持って意思決定していく環境がありますから、職員が学ばせていただけることがあるのではないかと考えました。

──他社留学する人を、どのように選びましたか?

宮崎 まずは公募を行いました。対象は係長クラス以上の常勤職員。ある程度の経験を積み、政策を策定した経験がある人のほうが、外部に出たときの吸収力が高いと考えたからです。約30人からエントリーがあり、2人を選びました。

選んだ基準はというと、一番は「目的意識の高さ」です。ベンチャー企業で新しいことを身に付け、それを公務に還元したいという想いの強さ、本気度、ですね。エッセンスさんからは「留学中は落ち込むことがある」と聞いていましたので、壁にぶつかったときにもがきながらでも頑張ってくれるだろう、と思える人を選びました。

経済産業省 宮崎由佳さん(秘書課・人材育成担当)

背景

環境変化が激しい為、経済産業省職員が変化し続ける必要がある

──八木さんは、なぜ志望したのでしょうか

八木さん(以下、八木)以前から、「ベンチャー企業の内部を見てみたい」と考えていて。公募が発表されたとき、「これだ」と思ったんです。経産省はこの国の変革をけん引する存在でなければならない。それに見合うような組織にアップデートできるところがあるはず、と考えたとき、ベンチャー企業から学べることがあるんじゃないか、って。個人的にも、ベンチャーマインドを持って、スピーディに物事を決断していける人間になりたいという想いがありました。もともとの私は、与えられた役割をソツなくこなす、「優秀なサラリーマン」であろうとするところがあったんです。でも、経産省という、“新しいことやってナンボ”の組織にいるのに、このままではいけないと思った。だから、自分を変えるチャンスだと捉えました。

私なんかがベンチャーに行って通用するのかという不安はありましたが、期待のほうが大きかったですね。

経済産業省 八木春香さん(留学生)

【他社留学中】

 

エッセンスからは留学先候補企業を3社提示。八木さんは、「すでに大企業といえる規模ながら、スピード感があり、リスクを取ってチャレンジしている」という理由で、メルカリを選びました。

留学中は、メルペイの経営企画チームで中期経営計画の策定、資金計画、収支管理などに携わるほか、メルカリの政策企画チームでの業務に従事しました

──留学先の組織になじむために、どんなことをしましたか?

八木 メルカリ・メルペイは、ベンチャー企業とはいえ大規模な組織です。初日、配属先の上司に「黙っていては埋もれてしまうかもしれない。『八木さんといえばこれ』というものを発信してはどうか」と言われました。そこで、「じゃ、短歌ですかね」と。私は短歌の歌集を集めるのが趣味なので、社内チャットツール内に私が推す歌人の短歌をつぶやくチャンネルを作ったんです。すると、80人くらいの人が見てくださるようになって、「この歌、いいですね」「この歌人に興味を持ったので、本を貸してください」なんて声をかけられるように。「経産省の八木さん」ではなく、「短歌の八木さん」と広く認識してもらえるようになりました。

ランチや飲み会にも誘っていただき、仲間として受け入れてもらえていると感じました。

 

また、当時、メルペイだけで100人以上の規模だったのですが、いろんな部署を順番に回らせていただけたので、多くの人と知り合うことができました。

──留学先でどんな気付き、学びがありましたか?

八木 たくさんあります。情報がオープンになっていて、誰もがチャットツール『Slack』を活用してあらゆる情報を取りに行ける。組織構造がフラットで、役職者・メンバー間の情報共有がスムーズである。ほか、社員をモチベートする仕掛け、業務効率化へのこだわりの強さ、など。

全般的に、一人ひとりがアイデアを出すことを妨げないこと、スピードが落ちないことを重視し、それを仕組み化しているところがとても勉強になりました。

 

中でも、もっとも大きな学びとなったのが、全社員が上司と週1回行う「1on1ミーティング」です。

30分間の1on1では、仕事状況についての共有や相談のほか、たわいのない雑談もしました。プライベートも含めてお互いのことをオープンに話し、距離が縮まったことで、仕事に関する相談も遠慮なくできるようになりました。

 

1on1の経験を通じて気付いたのが、「心理的安全性」の重要性です。「心理的安全性」とは、チームメンバー一人ひとりが、チームに対して自分の想いを素直に伝えられる、本来の自分を安心してさらけ出せる状態を指します。「気持ちが楽になる」というイメージで捉えられがちですが、これは「挑戦する風土」がある前提で導入されるべきものであり、挑戦者の前にある壁をなくすものだと理解しました。

 

経産省にも挑戦する風土はあります。でも、何か挑戦したいと思っていても、「上司にそれを告げたら一蹴されるんじゃないか」なんて不安から立ち止まってしまう、かつての私のような人が結構いるのではないか、と。でも、実際、自分が戻ってきて色々挑戦していると、みんな応援してくる。ただ私が勝手に怖がっていただけ。心理的安全性の獲得によって、新しいアイデアの提案が促進されるかもしれません。これはぜひ、持ち帰りたいと思いました。

──他社留学中、経産省からはどんなフォローがありましたか?

八木 私からは週1回、報告メールを送っていました。仕事内容のほか、できなかったこと、できるようになったこと、新たな気付きや学びなど。送付相手は、私を送り出してくださった宮崎さんはじめ、管理職を含む秘書課のメンバー5人ほどです。

うれしかったことや落ち込んだことなど、喜怒哀楽の感情も逐一伝えたのですが、必ず誰かが返信をくれて。正直、留学先では心細さもありましたが、皆がちゃんと見守ってくれている、一緒に戦ってくれていると感じられて、ほっとしました。

 

宮崎 八木さんの報告メールへのリアクションは、メンバー全員で、しっかり意識して行っていました。特に、「八木さんが落ち込んでいるときは、必ず誰かが励まそうね」と。

異分野のスペシャリストの集団に入っていくのですから、自信をなくす場面もあるだろうことは予想できていました。実際、八木さんが弱気になっていると見たら、「経産省ではこんなことを培ってきたはず。それは必ず活かせる」といったメッセージを送ったりしていましたね。

──他社を経験してみて、「転職」という選択肢は思い浮かばなかったのでしょうか

八木 まったく思わなかった、ということはありません。メルカリ・メルペイはとても面白くて、大好きになりましたから。けれど同時に、今までは気付かなかった、経産省の面白さも再認識したんです。社会に対してダイレクトに大きなチャレンジができる場所であり、何よりそれが世の中の役に立つなんて、なんて素晴らしいんだろう、と。ベンチャーで8ヵ月修業してみて、私は変われたと思うし、新たな自信が付いた。それを活かして活躍するには、絶好のフィールドだな、って。

それに、こんないい経験をさせていただいたのだから、しっかり役に立たなくては、という想いも強かったですね。

 

効果

本人の行動変容だけでなく、人材や組織のマネジメントに関する知見も持ち帰れた

【他社留学 After

──経産省に戻った後、他社留学経験はどう活かされていますか?

八木 先にお話ししたとおり、1on1ミーティングを経産省に取り入れたいと思っていました。そして、

戻ってみると、宮崎さんがすでに、1on1ミーティングを実施するための基本設計をしてくださっていたんです。

 

宮崎 世間で1on1が注目されていることは知っていましたが、留学中の八木さんからの報告メールを見て、取り入れる価値があると感じたんです。そこで、八木さんが復帰する前から準備を進めていました。

 

八木 今後は、一部の課室から1on1を試行していきます。私は1on1を実際に経験した立場から、意義や効果を啓蒙し、「こういう場合はどうする」といった相談に応じる役割を担います。

このほか、メルカリで学んで持ち帰ったものに、「月1回のサーベイ」があります。これまで、年1回の「360度評価」によって部下が上司を評価する制度はありましたが、水面下で問題が起きていた場合、改善のタイミングが年1回では少ないと考えました。状況の把握と改善のサイクルを早めるために、「月1回のサーベイ」の導入を提案し、実現に向けて動いています。

 

宮崎 彼女を送り出す前は、主にベンチャー企業の現場を知ること、スピード感やチャレンジ精神を身に付けることなどを期待していましたが、人材や組織のマネジメントに関する知見も持ち帰ってくれたのは意外な収穫でした。1on1やサーベイに限らず、「ベンチャーってこんなふうだった」「こんな発見があった」ということを、省庁内のいろいろな職員にフィードバックしてくれています。組織全体に、気付きと学びの機会を提供してくれているのは、とてもありがたいですね。

──他社留学を経験したことで、八木さん自身はどのように変わったと思いますか?

宮崎 私は、留学前の八木さんと一緒に働いていないので、以前とどう変わっているのかはわからないんです。いろいろなことを積極的に提案し、前へ前へ進めていく力強さを感じますが、それは以前からでしょうか。

 

八木 いえ、もともとの私は怖がりで、自分でブレーキをかけてしまうタイプ。人を巻き込むのも得意ではありません。チャレンジがしたくても、一歩を踏み出せずにいました。でも、今は、ビビらずに「とりあえずやればいいか」という発想に変わった。あえて不感症になって、人の反応を気にすることなく、思うことをそのまま発信して周囲を巻き込んでいこう、と覚悟が決まりました。

ちなみに、留学前にいた部署の上司がインタビューを受けた記事で、「元部下が他社留学に行って、別人になって帰ってきた(笑)」なんてコメントを出していました。「そこ笑うとこ?」と思いましたが(笑)、やはり第三者から見ても、私は変わったのでしょうね。

──他社留学で変わったと思っても、戻ってしばらくしたら元通り……となるケースもあるかと思います。八木さんは、その心配はなさそうですか?

八木 せっかく開いたのに、ここで閉じてしまったら、もう一生開くことはない……と肝に銘じています。幸い今は、他社留学をした第1号ということで、「変わったことをしてもいい存在」として下駄を履かせてもらっています。環境にも助けられているので、閉じずに頑張っていきます。

 

宮崎 八木さん自身が頑張るのはもちろんだと思いますが、周囲が意識的に応援していくことが重要だと考えています。貴重な経験をして戻ってきた八木さんを、しっかりはばたかせる。組織全体でそういうムードを作り上げていきたいと思います。

左)エッセンス株式会社・代表取締役 米田瑛紀

他社留学中、エッセンスは月1回面談を行うほか、都度サポートを行っています。

 

八木 「エッセンスさんとの面談時に悩んでいることを話したら、『この時期は、皆そこにぶつかるよね』という言葉とともにアドバイスをいただきました。相場観を持っている人に『そうだよね』と言われたことで、『私の悩みは特別じゃないんだ』と気持ちが軽くなりました」

 

会社名

経済産業省

業種

官公庁

URL

https://www.meti.go.jp/